「スカーレット」「G線上のあなたと私」で渋く光るアラフィフ女優、富田靖子と松下由樹「アイコ十六歳」からの紆余曲折
30年以上がたち、主役だった少女も脇役だった少女も、味のあるアラフィフ女優に
とまあ、ある時期からオーディションでの立場が逆転してしまったかのようだが、こちらも苦い経験を味わってもいる。ハタチくらいから交際していた音楽プロデューサーの小林武史が、95年にMY LITTLE LOVERを結成。その前から入れ込んでいて、ヴォーカルに据えたakkoと結婚したため、破局に至った。松下は小林に、心変わりされてしまったということだろう。
以来、浮いた噂はなく、昨年は「ダウンタウンなう」で結婚について「願望があまりない」と語ったりした。51歳という年齢からして、妻はともかく、母となることはなさそうだ。
そしてもうひとり「アイコ十六歳」で華々しく登場した人がいる。これが初の商業映画監督作となった今関あきよしだ。自主映画で認められ、大林宣彦の紹介でこの作品を撮った。
その後、持田真樹主演の映画「すももももも」や「モーニング刑事。抱いてHOLD ON ME!」をはじめとするハロー!プロジェクト系アイドルの映画・ドラマなどで、少女ビジュアルの名手としての実績を重ねていく。さらに、チェルノブイリをテーマにした社会派作品にも取り組んだが、その発表を目前にした04年、児童買春などで二度逮捕され、懲役の実刑に服した。復帰を果たしたのは、11年のことだ。
最新作「Memories」については、こんな発言をしている。
「この映画はひとりの少女の命の終焉と誕生を描いた物語。同時に監督である僕自身の『闇』についての映画でもある」(「CINEMATOPICS」18年12月3日)
折りしも、12月7日には横浜で「アイコ十六歳」のメイキングムービー「グッバイ夏のうさぎ」の上映が行なわれ、前売り完売という盛況だった。この映画は当時から本編以上に推す人もいて、今関と少女たちとのリアルな対峙っぷりが圧巻である。
個人的には、まだ15歳だった富田を取材した際、このメイキングでのやりとりについて聞いたのを思い出す。いきなりの主演デビューに葛藤し、思いのたけを泣きながら監督にぶつけたことについて、彼女はこう振り返った。
「だからあの時、取材がイヤだって言ったのもホントですし、CMがイヤだ、私はアイコじゃないって言ったのも、きっとあの時ホントにそう思ったから言ったと思うんですけど、あれを映画館で観た時、私はなんて甘いんだって思いましたから」(「よい子の歌謡曲」85年3月号)
このときから30年以上がたち、主役だった少女も脇役だった少女も、味のあるアラフィフ女優となった。そんな変化を愛でるのも、芸能の醍醐味だ。
たとえば「スカーレット」では、ヒロインの末妹を年代別に演じる稲垣来泉、住田萌乃、福田麻由子の豪華リレーが子役マニア的にたまらなかったりする。現実とフィクションのあいだで、それぞれのメタモルフォーゼを見届けていく愉しさ。やはり、ドラマも映画も舞台もなるべく長く多く見たほうが得なのだ。
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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫 (著)
女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?
人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦
瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。
摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。
瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)